新米PI産休に入ります

祝Embryogenesis!

教科書に書いてあることが、本当に体内で起きてるんだな〜と思うと感慨深いものがある。無事に生まれるまでは数え切れないトラブルが起こりうるので、何も確かなことは言えませんが、相続権のある人間が胎内にいることは確か。これ民法でかなり最初の方に書いてあった項目だった記憶がある。ここから流産したとしても、出産一時金も産休ももらえるので、だいぶ一人の人間という概念に近付いている感覚がある。

という訳でこれまでの覚え書きを残しておきます。


妊娠2ヶ月

2023年年末、妊娠検査薬により陽性確認。同時に気持ち悪さが出始めた。直前に研究合宿で少しワインを飲んだりしていたので不安になったけど、ごく初期の段階ではほとんど影響がないらしい。感覚的にはごく初期の方が影響がありそうなのに意外(発現制御も緻密だし)

それと同時に最近はカフェインも2,3杯であればほとんど影響がない、と言われていることを知った。それでもたまにカフェラテ1杯くらいしか飲まないけど、必ずしもカフェインを排除する生活はしないで済むというのはありがたい。

という訳で速攻で予約をとり近所の産婦人科にGo → 胎嚢と心拍確認、ただし小さすぎるので予定日はまだわかりませんとのこと。自動で回転する椅子に座って、カーテン越しに診察される形式で、プライバシー保護がすごい。

とりあえず、自分の中で教科書でみたあのEmbryogenesisが進行していることに感動した。もっと、勉強しようと思った。

結構早くつわりの症状が出てきたので、よくご飯に行く同僚の方たちにはこの頃にお伝えした。リステリア菌のせいで生物が食べれないというのは知っていたけど、寿司が食べられないのが辛い。特に、マグロ類はメチル水銀の蓄積量が多いため、推奨量は一切れとからしい。そんなバカな。寿司が食べたい。「妊婦 ネギトロ」でググる日々。


次は年明けに診察とのこと、この頃には食べづわりがキツくて、常に何か食べたり飲んだり。突然夜にトイレに駆け込んで吐いたりもしていた。ウイルス感染などがヤバいので、帰省予定もキャンセルして家でゆっくりした。そういえば、妊婦のスペイン風邪の感染による子供の自閉症のリスクの話があったなと思って、調べたら最新研究では関連が否定されたらしい。

つわりの中食べられるものはポテト・チキン・唐揚げ・トマトのピザ、フランスパン系の硬いパンやハンバーガー、ご飯なら冷や飯。みかん、いちご、ゼリーなどなど。炭酸飲料もよく飲んでいた。正月休みはずっと夫がご飯用意してくれたり、買い物行ってくれたりした。感謝。



妊娠3ヶ月

年明けに2回目の診察日、夫も連れていって胎児を見る。手足ができて二頭身になっていた。ドップラーによる心音と、予定日の確定。これにより、妊娠届の提出が可能になり、母子手帳をもらった。妊婦の初期検診のためのチケット(クーポン)がついているので、これを次回診察時に持ってきてくださいとのこと。

マタニティマーク(キーホルダー)ももらったけど、最近は妊婦さんを狙ってぶつかったり嫌がらせする人もいると聞くので、体調悪かったり安定期入るまでは基本的には隠しておこうということでリュックの中のチャックに装着した。

ちょうどこの日に直属のメンターの先生と話す機会もあったのでお伝えする。産休や育休と仕事関係の諸々との兼ね合いを色々調べ始めるが、情報が少なすぎて断念。

これまでずっと遠距離別居をしてきたけど、今後子育てを考えると私の実家かつ夫がいる東京に転職をしなければ、ということでよいタイミングではあったけど、状況が中々ややこしい。とりあえず、子供が生まれるまでは落ち着いていた方がよいのではないかということで、上司の方々にもご理解を頂けて、出産後にまた動き出すことにした。



妊娠4ヶ月

つわり全然終わらないんですが???

このまま順調に進むと、夏の間の学生受け入れや学会参加などに色々支障が出るため、職場の方々や人事の方にご相談を始めた。産休入るまでは直前まで学会でのオーラルの予定が普通に入ってるんだけど、大丈夫コレ?

産後の手続きのアレコレを調べるときに、役所のウェブサイトに載ってる夫婦が別居しているケースがほとんど離婚とか夫の単身赴任とかで、別居・共働きのケースが少ないのにもまた混乱。母子の住民票が別の住所だった場合にどうなるのか、未だにわかってないので、今度こども支援課的なところに相談しようかと思う。

一方で、この時期にしか出来ない、ということで血液検査によるNIPT(出生前診断)を受けることにした。NIPTで陽性が出た場合には、羊水検査による確定診断が必要となるため、最終的に中絶を選択する場合のタイムリミットを鑑みるとこの辺りが限界になるらしい。認証施設で受けたため、知ることができる結果は、3種類のトリソミーについてだけ(性染色体=性別情報も本来得られるが、それにより中絶を選ぶ人も出てきてしまう問題があるらしい)。正直陽性だったときにどうするかということは夫婦で決まっていなかったが、高齢出産にギリギリ引っかからない年齢なのもあったし、もし生後すぐ亡くなるトリソミーや、ダウン症により保育所探しなどが難しくなることがあれば、それらに備えるためにも知っておくべきだと思ったから。

ただし値段は20万弱かかるので、ゲノムや遺伝学を仕事にしていなかったら(悪い言い方をすれば興味本位で)受けなかったかもしれない。アメリカだと保険適用でもっと安いらしいので、気軽に受けられるんですね。

今回受けたNIPTは、アメリカで特許が取られている手法のため検体はアメリカに送られたあと解析結果が送られてくる。内容としては、ゲノムの全領域を偏りなく増幅する技術を使って、特定の染色体領域が増幅/欠損していないかを調べる。その際には、母体の血液を利用するため、胎児と母体のDNAは特定の割合で混ざり合っている。そのため、SNPなどの情報を使って、胎児由来のDNA断片と、母体由来のDNA断片の量を別々に推定し、それらの染色体ごとの偏りから統計的にトリソミーが起きているかどうかの検定を行う必要がある。

と考えるとかなりの個人情報がわたっているはずなんだけど、誓約書では個人の名前などの情報と検体は結びつけられないようにします(匿名ID管理)以外では大した縛りはなく、検体がわたった先で好きにデータを研究や事業のために使われても文句が言えない内容。正直仕事で患者さんの検体を使ったときにあれだけ厳しいインフォームドコンセントをとったというのに、こんなにゆるい誓約で海外に血液サンプル(といってもシーケンスデータだけだけど)を送られるのか、とかなり衝撃だった。妊婦さんに他に選択肢がないというのと、縛りを設けてもそれを承諾してもらうことが難しいとは思うが、逆に非認可の民間の検査の方が個人情報に関してはしっかり制限が書かれているのではないかと思った(実際に検査を頼んだ訳ではないので印象程度)。

検体は国内でシーケンスされたあとデータとしてアメリカに送られ、検査結果が来るのが1-2週間後。結果的にはすべて陰性ということで、トリソミーについてはほぼ心配せず出産には臨めそうではあるが、現在はダウン症であっても平均寿命がかなり伸びていて医療の進歩を感じたり、同時に遺伝性疾患の多様性と命の選択の是非について考えたり、実感を持って様々なことについて思考を巡らせる経験となった。

参考:https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4515/



妊娠5ヶ月

という訳で現在はいわゆる安定期に入り、Yogiboに横たわりブログを書いています。これから何が起こるかまったく想像できないけど、とりあえず大変なことだけは先達の言から伝わってくるので、二人でギスらない程度にこれからについて煮詰めておきたいと思います。

最近は日本や東南アジアの出生率の低下が叫ばれる一方で、SNSでは小さいこどもを連れて外出する母親に「子持ち様」と粘着するアカウントを見かけたり、なんとも世知辛い世の中です。子供が減ったために、逆にどういう性質かを知らない人が増えて、公共交通機関やレストランなんかで見たときに拒否反応を起こすのかなぁとも思っている(本来子供の叫びは不快感を生理的に呼び起こすものと聞くし)。下の兄弟を見ていたら少しはわかるかもしれないけど、自分が子供だったときにどれだけ迷惑をかけたか覚えている人は少ないだろうしね。

私個人の考えは、未来を生きる子供がいることは社会の希望だと思っているので、立派にはならなくとも楽しく人生を送って、できる限り長生きもしてくれたら大満足かな。

それではまたの機会に。



コメント

このブログの人気の投稿

再現性なんてないさ(?)

旧姓を失った研究者が海外でも活躍するためには

WLSのssh